ランディ・フィッツウイリアムは、銀髪に灰色の目の色素が全体的に色が淡かった。
ランディの特徴はオドオドと動く瞳と困ったような眉が印象で、そこから彼の気の弱さを感じる。
「あと、もう一名が来る予定ですわ」
その言葉と同時に玄関のベルが鳴った。
ハウスメイドは客を出迎えに去り、暫くして客と一緒に現れた。
「依頼をお受けなさった東洋人の方でございます」
新たな客を見て、一同が目を見開く。
何故ならばその客が、動物園で公開されている珍獣と同じくらい珍しかったからだ。
ここにいる人は全員、東洋人を見たことがないのだ。
「お前さん、東の島国出身だな」
コーディアスが彼に尋ねた。
東洋人男性の細く少し釣りあがった目がコーディアス神父に向けられる。
「よくお分かりで。私の出身を的確に答えたのは、貴方が始めてですよ」
内心で口笛を吹いた。
外人は外国語をしゃべるときは変な訛が出てくるが、東洋人男性の発音が流暢で訛がなかったからだ。
声色は澄んでいて爽やかで、声変わりをしていない感じも受けなくはない。
「無理もないな。お前さんの国は、今は鎖国という状態らしいから、黄色人種=清の人間という常識になってしまうんだよ」
「ですよね」
東洋人男性は溜息をつきながら、空いている椅子の上に正座をして座る。
コーディアスは、呆れながら指摘する。
「おい、椅子の座り方知っているよな?」
失礼だと思うも、気になったらとことん気になりだすタイプ。指摘せずはいられない。
東洋人男性は、コーディアスの指摘には気分を害したわけもなく、照れ笑いをする。
「すいません。私の国では座る時は正座が常だったためか、椅子の正しい座り方には正直なじみませんで。
あぁ、すいません! 履き物を脱ぐべきでしたね」
椅子を汚すのを恐れ、東洋人男性は履き物を脱ぐ。
コーディアスは、変わり者の東洋人男性を観察した。
黄色人特有の黄色味を帯びた肌だが、色素が薄いためだろうか、ほんのり黄色で白人には及ばないが肌が白い。
漆黒色の髪が真っ直ぐ伸び、後ろに一つにまとめられて背に垂らしてある。細く少し釣り上がった目は黒曜石のようだ。
着ている物も実際に見たことがないが、コーディアスは文献や資料で見たことがあった。
彼の着ているのは"着物"といものだ。黒に染められた布、胸の部分に星の模様がある。
靴下は"足袋"という。靴下と比べると面白い程形が違う。靴は"草履"と言うもので、それは藁で編んで作ったものらしい。
「何か?」
「あぁ、いやいや。なんでもない」
悟られないように観察していたのだが、相手は気配に敏感らしいのか気付かれてしまった。
東洋人男性は不思議そうな顔をしたが、気にするようなことでもないと思ったのだろう真顔に戻る。
そして、ここにいる人々に対して自己紹介をする。
「初めまして、私は東の島国からこちらの国に密航してきました。日本人の安部 水明です。
こちら側の名乗りだと、水明・安部になりますね。どうぞ、よろしくお願い致します」
丁寧に頭を下げる動作は綺麗だった。
「私の事は水明と親しみを込めてお呼びください」
涼やかな笑顔で東洋人男性、水明は皆を見渡した。
「皆さんが揃ったところで、依頼のお話をより詳しくお話したいと思います」
ジェイミー・キューベルトが全員揃ったところで、依頼の話を持ち出す。
皆一同にジェイミ−・キューベルトに注目した中で、コーディアスは数日前に記憶を遡らせた。
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