母にお使いを頼まれていた兄妹は、頼まれていた用事を放り投げて森の中で遊んでいた。
家に帰るときでもいい、と言い出したのは兄だ。妹は遊んでいても頼まれごとが頭から離れず、ずっと気になっている。
「ねー、早く済ませて帰ろう」
兄は嫌そうな顔をした。
「いいよ、一人でお使いに行って帰るもの」
妹はそう言い放ち、その場を走り去った。
昼間でも薄暗い森は、苦手の部類に入っていた。不気味なカラスの変に甲高く鳴く声、
じめじめとした湿気の空気、不気味な動物の視線。それらが、全部嫌いだった。
だけど、男の子はそういう場所を好む。
兄に連れ出されるときは、いつも森で遊ばないといけない。
「いつもいつも、すぐそうなんだから」
心の中で兄の不満を呟きながら、夢中で小走りで歩いていたせいもあり―
「きゃー」
何かに躓く。
「やだ、石かな?」
そろりっと立って、躓いたものを確かめるために地面に視線を下ろす。
視線に広がった地面は赤かった。
「ぁ…ぁ”…わ”ぁぁぁぁ――――――――――――」
体が凍り、思考が真っ白になる。何がどうなっているのが、
これは現実なのかもわからない。だが、これだけは唯一わかった。
地面の赤は血の赤だ――。