「そうならば、一度に様々な事が起こったから疲れ果てたせいだ。心労だ。きっと、そうに違いない」

 ある程度タオルで水分を吸い取り、羅愛は手櫛で髪の毛をまとめる。

めんどくさいので、いつもの三つ編みを却下して一本に結うことにした。

「心なしか、ユタカみたいに眉間に皺がよってるぞ〜」

 解が自分の眉間に指さして言う。

「っぷ、本当だ」

 それに、カイが腹を抱えて笑う。

「失礼な! アイツと一緒にするなよ。それより、作戦会議だろ?」

 羅愛は、強制的に話を戻す。

 これ以上余計な話をすると、このメンバーだと何故か長引く可能性が大きいのだ。

 そうでなくとも、何か現実世界に繋がる行動を起こさなければ、悶々とユタカのことを考えてしまい落ち込んでしまう。

 また、闇の泥沼ループにはまりそうになり、羅愛は両頬を軽く叩いた。

 国の危機が目の前に迫ってきているのに、ユーロ国の王である自分がしっかりしないでどうするのだ? 

と、自分に言い聞かせる。

 今は私情よりも、王として行動することが求められるのだ。

「作戦会議の前に言っとく。ユーロ国の王として、アタシは城の奪還を命を懸けて行うのは義務だ。

だが、ここに居る皆は義務ではない。特に、解とカイは今はアラビア国の人間であるし、解の方はアラビア国王であるからな。

無理に戦ってもらうより、無事に逃げて自分の身の安全を心配してほし――っうわ、何するんだよ! 

聖書は投げる物ではありませんって教えられなかったのか?」

 話途中で、羅愛に向かってくる飛行物体により話が逸れた。

 分厚い飛行物体は、もちろん聖書だ。

「あら、知りません? 分厚い本は凶器にもなるのですよ。

これは、ミステリーのお約束です。あまり、ふざけたことを抜かしやがりますと、今度は分厚い本の角を凶器に致しますよ?」

 非常に丁寧な言葉使いの中に乱雑な言葉使いが入っている。  

「怒り心頭マックスマリアが光臨したな」

 解が暢気にお茶をすすっている。

「大体、私達を何だと思ってますの? 簡単にくたばると思って? 思っていたら、貴方が最初に手本にくたばってください」

「人が心配しているのに――」

 羅愛が深い溜息をつく。

「心配という名目で、オレらの楽しみ奪わないでくれない? なぁ、解」

「そうだそうだ! アラビア国の王だから、自分の身の安全が大事? 

死ななければいいだけの話なんだから、仲間はずれにするなよ」

「僕は裏方なんで――」

「何を言ってますの? ジャス。そんなのフライパンを振り回せば、直に終わりますわ。

羅愛お姉様、もちろんワタクシも腕によりをかけて戦いますわよ」

「と、皆さんが口々に言ってます。もちろん、羅愛軍師長の側近であります自分も戦う次第です」

 羅愛は全ての者たちを見渡した。

「アンタら、遊びじゃないのはわかっているね?」

 シーンっと静まり返った空間。

 先程軽口を叩き合っていた者たちだが、真剣になるのは早い。

 羅愛は息を深く吸い込み、吐く。

「城の奪回。そして、大祭を無事に終わらせようじゃないの」





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