豪華絢爛のシャンデリアが、この部屋を異様に神々しいまでに眩しく光らせる。

 横長い部屋の真ん中を占める、入り口から奥までの長いテーブルがコの字型に並んでいる。

 右側に文官で左側が軍官という決まりで向かい合わせになった人が座り雑談をしいる光景は、

どこかのパーティーみたいな雰囲気だった。

 文官の上座はユタカが座り、軍官の上座は羅愛が座っている。

そして、来客のアラビア国王の解とそのお供で来場しているカイは、一番入り口に近いテーブルに座ることになった。

「静粛に」

 ユタカが起立して、この騒がしい場から静かな場へと誘うために、冷えた低い声でこの空間全体に響かせる音量で言った。 

 そうすると、パーティー会場のような騒がしさは一転して、人が一人もいないような静かな空間へと早変わりする。

「大祭前のお忙しい中、お集まりいただき感謝する。本日のお題に入る前に一つ皆に知らせがある。

昨日、アラビア国王が予定より早く来国した。あちらにおわす方が、アラビア国王である」

 ユタカの紹介に、羅愛とユタカ、カイを除くこの場にいる全員が一斉に解を見る。

 全員の視線が痛いのか、解が立ち上がって会釈をしている。

「おいおい、王が会釈してどうするんだよ」

 そんな解を見て、羅愛は盛大にため息をついて小言で突っ込んだ。もちろん小言は聞こえるわけがなくい。

 会釈をしている解は、斜め後ろに解の影のように立っているカイにこづかれ、着席を促される。

 解の着席を確認し、ユタカが再度この場を仕切った。

「本日の議題だが、アラビア国王が我が国の内政について物申したいということであるらしい。

そのため、皆には集まっていただいた」

 本日の議題に、この場はざわめいた。

「ふん。小国に物言われるなんて、この国も落ちぶれたものだな」

「サハド右大臣、関係ない発言は控えろ」

 羅愛の横に座っている男が、横暴に不満を口にする。大柄で筋肉質だが猫背である。

戦闘意欲が人相にまで出てきている―大型の肉食獣を思わせる男だ。

 羅愛は、男を咎めた。

「羅愛軍師長の仰る通りだ。発言がある者は、挙手をお願いしたい」  

 ユタカの冷ややかな一声に、また空気が静まる。

「なければ、アラビア国王に発言権を与える。では、アラビア国王物申されてみよ」

 そう促されて、解は先ほどの雰囲気から一転し王の風格を纏って立ち上がる。

 綺麗にまっすぐ立ち上がる。まっすぐ前を見据えると胸を張り顎を引く、

全ての者たちを冷静に見ようとする真剣な眼差しはカードをプレイしている時の解の目だ。

彼の纏う空気が緊張の糸を張り詰めた空気へと変わり、この場の空気を緊張の渦へと巻き込もうとしている。

「やれば、できるじゃないか」

 普段の腑抜けっぷりと馬鹿っぷりを比較すると、別人のような変貌っぷりに羅愛は目をぱちくりした。

「ご紹介に預かりました、我はアラビア国王の解と申します。

この度はめでたい席に、来賓としてご招待していただき感謝致します。

ユーロ国がこれからも栄華を極め、いっそうの繁栄を期待しております。

挨拶はこのくらいにしておきまして―近年の問題、ユーロ国にも関わる問題について発言したいと思います」

 話を進めるにしたがい、解は王としての風格が出てくる。

 解は生まれてからの王ではなかった。これは苦労して身に付けたものであろう。

 愛おしい人と肩を並べられても似合うように、血の滲む努力をしたに違いない。

しかし、頭脳の方はまだまだなんだろう…、台詞が全て棒読みだったのがご愛嬌だ。

「近年、我が国では、ユーロ国から難民が流れて来る問題の対処に追われています。

平和な国の住民が何故、他国へと流れてくるのか。その問いに対して難民達に事情を聞き及んだところ、

水の枯渇で苦しみ、尚且つ税で苦しんだ者たちが祖国を捨てざるえない事情があると聞きました」

「難民というのは、貧困地区の人間達か」  

 誰かが解の発言中に言葉を投げかけた。

 その言葉に対し、解は肩を竦める。

「我が国はユーロ国と親しい間柄なので、このままの情勢が続けば国は崩壊すると進言しようと思っただけです」

 一通り発言を終わった解は、椅子に着席して肩を揉む。緊張しすぎて、肩が凝ったらしい。

「ユタカ宰相」

 羅愛は挙手した。

「羅愛軍師長、発言を許す」

 羅愛は発言を許され、静かに立ち上がり周囲を見渡した。

 羅愛が立ち上がるときに、この場にいる者達の視線を受ける。その目線が、羅愛は嫌いだった。

 憎悪を含む目線、あざける目線、妬みを含む目線、煩わしいがっている目線…。様々な負の目線が羅愛に向けられる。  





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