カイは今までのふざけたような表情から一変、仕事モードの表情に移り本題に移る。 「あれ? あぁ、言い忘れましたね。マリアさんはレジスタンスの行動に協力してくださってます。 彼女が来ない理由は、2日前に起きた暴動に加担している最中に羅愛軍師長に捕まってしまいましてね。 それで、彼女は今は牢屋にいて出れない状態なので変わりに来たのです」 「マリアの場合はわざとっぽいなぁ」 「何のために?」 「羅愛と戦いたいために? アイツはな羅愛とは犬猿の仲なんだよ。顔を合わせりゃ、喧嘩ばかりしている」 あの二人の犬猿の仲を思い出して、肩を竦める。 思い出すだけで身震いするほど、凄まじいのだ。顔を合わせりゃ、喧嘩ばかり。と言ったが、喧嘩以上のレベルなのだ。 「今日はですね。貴方に、これを渡すように言われてきました」 カイはラルトに長方形の木の箱を貰う。 「もしかして、例のアレが輸入できたのか?」 木の箱の中身を急いで開けて確認すると、一丁の拳銃が入っている。 子供がおもちゃを弄んでいるように、拳銃をベタベタ触りなが感触を確かめた後に懐にしまう。 箱の中の正体が何かわかったラルトは、頭を手で押さえている。 たぶん、箱の中身が危険物だったということ知らなかったのだろう。 「また、法律に引っかかることに手助けしてしまいました……」 「レジスタンスのリーダーなのに、法律のこと気にしているじゃねーよ」 真面目なのだか単なる臆病なのだか、全然わからない。 「だ、だって、拳銃ですよ? テクノロジーの中で危険で殺傷能力が高い拳銃は、 民間で勝手に売買をしては禁止にしている物の一つですよ」 「オレはユーロ国民じゃないから、そんな法律は知らないね」 「そんなぁ〜。見つかったら禁錮5年に処されたら、貴方の責任ですからね!」 情け無い声でラルトに文句を言われた。 「レジスタンスのリーダーが、違法なことにビクビクしているんじゃねー! まったく、もう少し心を太く持ってよな」 「もう二度と"伝説の子ら"と呼ばれる人間と関わりたくありません! 何で彼らと関わると、トラブルに巻き込まれるんだろう?」 ぶつぶつ文句を言い出したラルト。 「しょうがねーな、お駄賃あげるから機嫌直せよな」 あまりにも煩いので、カイはお駄賃という名の代物を取り出した。 「これですか?」 ラルトは怪訝そうな目でカイを見つめた。 取り出したのは特別な物ではなく、ボロボロの折りたたんだ紙だった。 「そんな目で見るんではない。紙は紙だが、この国の重要秘密が書かれた紙なのだ」 もったいぶりながら、そっと紙を広げる。そして、ラルトに紙に書いてある内容を見せた。 「な、これは、この街の設計図?」 「そう、本物ではないのだけどね。昔さ、本物を見て書き写したものなんだ。 この街は、大戦争ずっと前に建てられたものだと言われているんだ。 廃墟当然だったこの街を住みやすくさせるため、新築したといわれている。 その時に初代王が自ら調べて書いたのが、この設計図なんだよね。あ、本物は城にあるんだけどね」 「どうして、本物のコピーを作ろうとしたのですか?」 「ここ見てみ?」 カイは地図を指差して、講義を黙々と実施する教授のように説明をする。 「ここは、この街の真下で地下路みたいなものだな。で、この地下路は城を繋がっているんだよ」 「な、城に何年も勤めていますが、そんな仕掛けがあるなんて知らなかったです」 目を皿のようにして驚くラルトを見て、カイはトリックを成功させた手品師のようにほくそ笑む。 「驚いた? 他にも隠し部屋や隠し通路があるんだ。 オレがどうしてコピーを作ったかというと、いざとなったらの保険。 城に怪しまれないでこっそり入れるし、脱出も可能! この地図の内容を知っているのは世の中で7人しかいないよ。そんな貴重な情報が書かれた地図をお前に進呈しよう」 カイは表彰状授与のようにラルトへ地図を渡す。 ラルトはオドオドしながらも、壊れ物を扱うような仕草で受け取った。 「これで機嫌が直ったかな?」 「直ったもなにも、凄いですよ! あ!」 地図を見ながら思い出したかのように叫ばれ、カイは吃驚する。 「何? 何か不備でもあったのか? 返品はなしだからな」 「そうではなく。ここ数日なのですが、城におかしなことが起こってまして……。 もしかしたら、犯人はこの通路のこと知っている? と今思ったのです」 「おいおい、それはありえねーぞ」 知っている人物は世の中で7人しかいない。 この通路を使って城に災いを起こしているとすれば、カイがよく知っている人物達の誰かが国を裏切ったことになる。 それは、絶対にあり得ないことだ。
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