「気にするな、俺らは俺らの用件で今日祝福しに来ただけだから」

「そうそう、悩みすぎると禿げになる」

 カイの一言余計なつけたしに、ユタカの眉に眉間の皺が入る。

「あれ〜?気にしていたぁ〜?」

「貴方達、人をからかうのもいい加減にしてください」

「そうだぞー、ユタカ君はいつもアタシに禿げを指摘されていて、悩んでいるのだぞ」

「違います」

「義理兄弟、隠さなくてもいいんだ。どーせ、人は禿げる」

「悩んでいませんから」

「そうそう、人は歳取ると禿げるっていうわよね、そんなユタカ君でもアタシは大好きだから」

「だーかーらー、貴方達は人をからかうの止めなさい」

 禿げの話題を皆にされたからか? ユタカの機嫌がますます悪くなった。

 羅愛は心の中でハラハラした。悪くなった機嫌の行き場はアラビア国に二人に向けられますように。そんなことを心の中で願った。

 ユタカの圧倒的な雰囲気に顔を真っ青にさせている男の子に

「はい、治療終わったよ。怖い思いさせて、ごめんね〜」と謝って、家に帰るように促す。

「アラビア国王、来国したからには私達の国の仕来りに従ってもらいますから!」

 悪くなった機嫌の行き場は、アラビア国の二人だ。

 羅愛はほっとする。

「「えぇ〜」」

「えーじゃありません、花火は大祭まで禁止しているのに花火を打ち鳴らすとは不謹慎です。

もし花火が残っているならば、その花火は全部没収。なおかつ、象を滞在中乗って国内を歩き回るのも禁止」

 ユタカにそう指摘され、不満そうに解はユタカに言う。

「お前は偉いのか?俺は偉いぞ」

「郷に入れば郷に従えという言葉をご存知ない? 例え他国の王であっても、我らの国に従ってもらいます」

 カイは羅愛に耳打ちした。

「なんか久し振りに会ったユタカはピリピリしているね」

「あぁ、大祭前だからだろう? あと、色々と面倒なことが多いからね」

「面倒かぁ〜、面倒と言えば俺らも面倒を持って来たのだけど」

「なにぃー!?」

 コソコソ話に驚いて叫んでしまった羅愛を、ユタカがいぶかしむ。

「どうしました?」

「いや、こいつらが面倒を持ってきたっていうから―」

「何ですか、貿易摩擦の問題ならこの間書簡送ったばかりでしょう」

 解は首を振って答えた。

「違う違う、前々から問題になってきたことだ」

「ん?」

 羅愛は嫌な予感がした。

「水問題―」

 その言葉を聞いて、水売りの少女の言葉が思い出される。

“酷いところなんて、水税を上げている地区があると聞くわ”

「どうもさ〜、そちらの国から水難民が来るんだよね」

 遠くから水売りの声が聞こえる。日照時間は残りわずかになったが、砂漠の国はまだまだ暑くなる。

さらに、水を求める人が多くなるだろう―





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