羅愛にこの場の先導権を取られ、アホ面をさらしているリーダーに一喝する声がした。

「まぁ、人間の欲に見事漬け込む貴方もさすがですけどね、羅愛」

「ん?」

 どこかで、聞いたことがある声だ。声した方へと視線を向けると

「あ、アンタは!!」

 羅愛は移動した目線の先の人物に驚いたため、素っ頓狂な声を上げることになる。

 そこには、天使のような純白な女がいた。

 透明感溢れる白い肌、太陽の光を反射し神々しく光る金色の髪、純白の外衣は上質な布で滑らかに風になびいている。

 女の表情は聖女のように慈悲深い。だが、羅愛を見ている目は慈悲深い眼差しに、闘争心がスパイスのようにあるのだ。

「お久し振り、羅愛。ユタカも一緒なの?」

 聖女のように微笑みを浮かべる女は、羅愛に挨拶した。

「マリア・テレアージ!!!!!」

   周囲を見て羅愛を再度見た次の瞬間―  



バシュッッツ  



 空気を裂く音が鳴り響き、マリア・テレアージが放った鞭が羅愛を襲ったが、羅愛は素早く刀を抜きガードした。 

「久し振りの感動もつかの間、これはどういうことだね?」

 羅愛は旧知の知人の手荒い再開の儀式に、残念そうに嘆いた。

「あら、貴方が悪いのよ。いつも何時も私の邪魔をして」

「マリア・テレアージ、この騒ぎはアンタのせいなの!?戦い好きは直ってないわね」

 彼女マリアは聖女の様な女性だが、戦いを非常に好む性悪女であることを羅愛は知っている。

人々の慈悲深き助けといっては手を組み、最終的には戦いに発展することはしばしばあった。

 今回のことも、マリアが裏で操っていた騒動だと結論つけると、成る程、彼女らしいシナリオである。

 羅愛は旧知の手荒い再開の儀式に、残念そうに嘆いた。

「勘違いしないで頂戴、私のせいじゃないわよ。

貴方達、城に居残り組がしっかりとした政策をしていれば、このような結果にはならなかったわ」

 悲劇のヒロインの如く嘆くマリアを、羅愛は胡散臭そうに横目で見た。

「無理言うでないよ、あの政治家達がアタシ達の言うこと聞くと思うか?

大祭前の混乱は付き物だ。確かにアタシらも、もっと何か出来ることがあったかもしれないが、

王が皆の前に出られない時期は不安で混乱するだけさ」

「ユタカはどうなの?あの子は王代理じゃないの?

あの子が王代理であるから、私たちは安心して各地を出てこの時期に備えていたのよ」

「政治は所詮数だ」

「甘いわね、裏で手を回せばいいじゃないの?こんな風に」

ふっと後ろから気配がして、羅愛は体をねじって後ろを振り向いた。

「この役人めがぁぁぁ!!!!!」

 少年がナイフを振りかざして、羅愛の方へと突進してきたのを察知した。

「ほ、ほんとーにアンタって名前がマリアなのに、汚い手段使うのが好きだわね!」

 少年の手を狙って蹴りあげナイフを落とすが、その間に隙ができる。

「そうやって、敵を倒すのが楽なのよ!」

 出来てしまった隙をカバーしようと、右半分の身体を捻るが、

その隙へとマリアの鞭は瞬速に蛇が獲物に飛びつくかの如く攻撃をする。

 こんなのありかよ!と心の中で叫んで、重症につながる衝撃を覚悟したその時だった―

「ん?」

 予想していた衝撃が未だにない。ただただ、衝撃に備えていたために自然と硬直していた肩が痛いだけ。   

 目を細めて前を見ると、そこにはいない筈の男性が、羅愛の前に立っていた。

「二人ともいい加減にしろ」

 予想した衝撃が来ないのは、羅愛とマリア・テレアージの間に入ってきて、マリア・テレアージの攻撃を防御した第三者が現れたからだ。

「ユタカ!!」

「なんて運がよろしいやつなのでしょう」

 ユタカは静かな眼差しを羅愛に向け、何か訴えたがっていそうな表情をした。

「う、ユタカ君や、コミュニケーションも大切ということを毎回話しているだろうに?

確かにアンタの無言の圧力はよく効果があるよ…。はいはい、すいませんでした、勝手に城抜けて」

 特有の無言の圧力攻撃に、羅愛はタジタジになった。

「あと、誤ることありますよね?」

 腕組をして考えるが、全然出てこなく「なんだっけ?」と呟くと、ユタカの鉄拳が飛んできた。

「痛いじゃないか!!」

「一人で危険な場所へ突っ込んで行ってごめんなさい、という言葉が足りませんでした」

 丁寧に言う言葉のわりには、大吹雪のような冷たさが含まれている。  

「貴方に何があったら、誰か仕事するのでしょうかね?貴方の分まで―」

「わー、仕事の鬼ぃぃぃぃぃ。普通に心配しないか!仕事のためか!?この冷血鬼!」

 相手は本当に仕事の鬼だ。

出来てしまった隙をカバーしようと、右半分の身体を捻るが、その隙へとマリアの鞭は瞬速に蛇が獲物に飛びつくかの如く攻撃をする。

 こんなのありかよ!と心の中で叫んで、重症につながる衝撃を覚悟したその時だった―

「ん?」

 予想していた衝撃が未だにない。ただただ、衝撃に備えていたために自然と硬直していた肩が痛いだけ。  

 目を細めて前を見ると、そこにはいない筈の男性が、羅愛の前に立っていた。

「二人ともいい加減にしろ」

 予想した衝撃が来ないのは、羅愛とマリア・テレアージの間に入ってきて、マリア・テレアージの攻撃を防御した第三者が現れたからだ。

「ユタカ!!」

「なんて運がよろしいやつなのでしょう」

 ユタカは静かな眼差しを羅愛に向け、何か訴えたがっていそうな表情をした。

「う、ユタカ君や、コミュニケーションも大切ということを毎回話しているだろうに?

確かにアンタの無言の圧力はよく効果があるよ…。はいはい、すいませんでした、勝手に城抜けて」

 特有の無言の圧力攻撃に、羅愛はタジタジになった。

「あと、誤ることありますよね?」

 腕組をして考えるが、全然出てこなく「なんだっけ?」と呟くと、ユタカの鉄拳が飛んできた。

「痛いじゃないか!!」

「一人で危険な場所へ突っ込んで行ってごめんなさい、という言葉が足りませんでした」

 丁寧に言う言葉のわりには、大吹雪のような冷たさが含まれている。

  「貴方に何があったら、誰か仕事するのでしょうかね?貴方の分まで―」

「わー、仕事の鬼ぃぃぃぃぃ。普通に心配しないか!仕事のためか!?この冷血鬼!」

 相手は本当に仕事の鬼だ。

 羅愛とユタカが言い争いし始め、マリア・テレアージは無視されたので、二人に突っ込んだ。

「私がここにいるのに、無視してくださらないで欲しいですわ」

「忘れていた、ごめんごめん〜。はははははっ〜」

 何だか馬鹿にされているような言い方に、マリアは少々腹が立つ。

「ユタカ、お前の説教は後だ後!この暴動の中心人物のあの男とマリア・テレアージを重要参考人として確保!

それから、とりあえず一時金給付金としてこれぐらいの金をばら撒くぞ!!」

 テキパキと現場の収集に向けて指示して、懐から取り出したのはかなりの札束。 

「ら、羅愛!お前、これって―」

「何勘ぐっているのだ?不正なお金じゃない、これはアタシのヘソクリだ!

ヘソクリを分け与えるのだから、アタシは偉いのだ。どうだ?褒めていいぞー」

 微妙に絶好調すぎるテンションの羅愛は、バイクに乗り高台からバイクごと飛び降りた。

見事着地すると、バイクを走らせながら羅愛はお金をばら撒く。

「さぁ、下々よ金が欲しかったらここまでおいでー」

 高い所からその光景を見ると陳腐で痛々しく感じ、ユタカは頭痛を酷く感じる。

「とりあえず、あの馬鹿はほっといて―」

ユタカは深い深いため息をついて、羅愛からマリアへと視線を移す。

「私達は拘束でしょうね」

「何で、暴動起こした?大祭前にメンドクサイことをしでかしてくれたな」

 羅愛に対して恭しく丁寧な口調が一変、冷たく素っ気無い言い方に変わった。

 マリアが知っているユタカの口調だ。長く会わないうちに、この二人の関係の何かが変わったということか?

 マリア・テレアージはユタカの質問を肩を竦めて答えた。  

「これだけ暴動起こしたら城の堕落した奴らが震えあがるでしょ?やつらに注意したほうがよいわ。この時期に、裏で動いている者達がいそうだから」

ユタカは思わず一歩下がってマリアを見た。

「どっから仕入れた情報だ?」

「ふふふふっ、それはじきにわかるわねー」

「まぁ、出所はわかるような気がする」

「それにしても、気苦労耐えないわね〜。貴方、羅愛の世話係りが仕事みたいに見えるわよ?」

「断じて違う、否定する」

 しかし今の状況から見たら、羅愛がトラブルメーカーに見え、ユタカはそれに巻き込まれる哀れな被害者の一人としか見えない。

「ご愁傷様」

 ユタカの苦悩のオーラが身にヒシヒシ感じ、マリア・テレアージは目の前の男が物語の悲劇な役者のようで可愛そうになってきた。

 一方羅愛は、自分が原因で苦悩している人がいるとは知らず、楽しげに愛車を走らせてお金をばら撒く。

「いやー一度やってみたかったのよね。お金ばら撒くって理由がどうあれ、リッチな感じ?」

 この国の問題児なのかもしれない。





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