背伸びをし、他を当たれという具合に手をヒラヒラした。その時だった。
「いてっ。おい、聖書は人を殴る道具ではないんじゃなかったのか?」
分厚い聖書の角で殴られた。
本日二度目の攻撃は、コーディアスの頭にタンコブが二つも作った程に強烈であった。
「貴方のような不良神父には、この攻撃が利くのです」
「吸血鬼には十字架、不良神父には聖書の角ってか? おい、俺のニューロンが減るじゃねーの」
「完全に減らしてあげましょうか?」
お互いにらみ合いをする。
「ふっ、精神病院に任せればいいじゃん。
最近は精神病院も改革が進んで科学的だから、非科学的物に頼らなくてもいいんじゃ?」
深く溜息をつくコーディアス。
「直接依頼が来たのですから、断ることも失礼でしょうに」
天使の微笑みを浮かべ、何百ページもある分厚い聖書を構えて殴る体制に入られる。
「悪魔のせいじゃなければ、行っても意味がない」
「行ってみるだけで、相手は安心をするでしょう」
コーディアスは内心舌打ちした。
「プラセボ効果を俺にやらせるわけか」
「プラ?」
「いいや、なんでもない」
相手に聞こえないように呟いただけなのに、地獄耳で聞こえたらしい。コーディアスは、慌てて話を変える。
「この役目は、俺は不適だ」
「私もそう思いますが、貴方があまりにも暇そうでしたのでね。
それに、働かざるもの食うべからず! という東洋のことわざがありますでしょう。
貴方は仕事を選りこのみしすぎて、最近暇じゃないですか」
「ようは、仕事しろと?」
「えぇ、そういうことです」
コーディアスは最大限に嫌な顔をし、めんどくさそうに資料を取って立ち上がる。
「受けてくれますよね?」
「断れば、分厚い凶器に襲われそうだ」
「もちろん」
最初から拒否権は無かったのだ。
悪魔憑きという真実により肩身が狭いバチカンから、外に出れるだけでもありがたいのだが。
めんどくさがり屋のコーディアスは、自分も目的以外に逸れる仕事はしたくはなかった。
「あとは、聖水の攻撃も受けてみますか?」
「止めてくれ」
吸血鬼や悪魔のような反応はないが、聖水をぶっかけられれば頭が割れそうな頭痛に襲われる。
だから、仕事上聖水を使うときは、自分にかからないように最大の注意をしているわけだが。
「どうなるか見てみたかったのですけどね」
天使のような顔で、恐ろしいことを言う。
「俺で人体実験するなっ!」
そう言い放ち、資料を持って急いでこの部屋を出たのであった。
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